こんにちは。大人かわいい動物ジュエリー作家のさちこです。
何度かジュエリーをご購入いただいているお客さまから、
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『星空のヘアゴムを作りたい』
とご連絡いただきました。
オーダーメイドは難しいので全部が全部受けられるわけではないのですが、SNSでもSORAのリングたちをご愛用頂いている様子をシェアしてくれる方で、これまでのお取引でも安心して承れたので今回もお受けすることにしました。
とは言っても、今回はヘアゴム。私自身人生のほとんどをショートカットで生きてきているので、髪留めやヘアゴムといったものにはてんで疎く、お客さまにご相談しながらの制作となりました。
一般的なヘアゴムは大きくても5㎝くらいが主流のようでしたので、今回『大き目』をご希望という事で、幅は思い切って7㎝にしました。
バランスよく黄金比を採用して高さは4.4㎝に。
大きな楕円形の925銀製 ヘアゴムです。
『星空のヘアゴム』という漠然としたテーマでしたが、お話を聞くとお客さまには明確なイメージがあり、そのイメージをちゃんと伝えてもらったので、安心して進められました。
フルオーダーメイドの進め方
今回の様なオーダーメイドの時には、SNSやネットショップの問合せから、『こんなの作りたい』とご連絡を頂き、そのままSNSのDMや各ショップのお問合せフォーム、またはメールで打合せをしていきます。
イメージに近い画像やイラストなどを送ってもらい、できる限り正確に出来上がりイメージを共有します。
- 強度的にこうしたいけど、重くなります
- シルバーで作るのでここはこの部品になります
など、技術的に可能なもの、難しいものなども共有します。
すり合わせができたら、デポジットを購入してもらい、作業開始となります。
作業を進めていく中で、ここどうする?というものも出てくることがあるので、その都度お客さまと確認しながら二人三脚で進めていきます。
カボションの石留め
![](https://sachikochida.com/wp-content/themes/cocoon-master/images/woman.png)
3つの星座を配置して、メッセージの刻印を入れたい
ということでしたので、3つの星座の一等星にそれぞれの誕生石を入ることをご提案しました。お客さまもとても喜んでくれました。
2㎜の石なら簡単に留められるはずでした。
でも、1つがラピスラズリだったのです。私も大好きな石です。
石には良く見るダイヤモンドの形の様なファセットカットと、半球体のカボションがあります。
![さちこ](https://sachikochida.com/wp-content/uploads/2018/03/profile-20160803-chidasachiko-monokuro.jpg)
余談ですが、
この「カボション」って石の
状態を表す擬音みたいでかわいいですよね~
石の性質によりどちらに削られるかが決まるのですが、ラピスラズリはほとんどがカボションです。
ヘアゴムのプレート自体は重さと強度を考えて、厚さは2㎜ほど。
ファセットカットなら簡単に石留めすることができます。
最初は、
![さちこ](https://sachikochida.com/wp-content/uploads/2018/03/profile-20160803-chidasachiko-monokuro.jpg)
カボションだけど
まぁ大丈夫でしょ
と甘く考えていました。
でもどこの業者や卸店に行っても、
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2㎜の板にカボションなんてどうやって留めるの?
無理でしょ。
と言われるばかり。
![さちこ](https://sachikochida.com/wp-content/uploads/2018/03/profile-20160803-chidasachiko-monokuro.jpg)
さて、困ったぞ。
お客さまに石の変更をご提案したほうがいいのかもしれないと、メッセージを書き、いや!やっぱりもう少し考えてみようと、思い直してメッセージを消す という事を2回くらいやりましたw
というのもラピスラズリを選ばれる方は、ラピスラズリが好きなのです
ラピスラズリに限らず、好みの石、思い入れのある石はあるもの。
折角のオーダーメイドなんだから、好きな石で作りたいという気持ちは痛いほどわかります。
石留方法を模索
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ファセットとカボション
ファセットカットは下から2/3の辺りがガードルと呼ばれ一番広い部分です。
このガードルが埋まるくらいの穴をあけて、ガードルを押さえるように、まわりの銀をつぶしてあげることで簡単に留めることができます。
カボションは底辺が広いので、底と、一番広い底から狭くなる上に向かって壁が必要になります。
周囲をくるっと囲む覆輪留めという留め方です。
厚さ2㎜ではとても足りません。
A案
2㎜の穴を貫通させて、裏側にフタを付ける ファセットカットと同じように周囲の壁をつぶして留める
B案
2㎜のカボション用の石座を作り、板にそれごと埋め込み留める
C案
貫通させずに底を残して削り、穴に内径2㎜の丸カンをロウ付けし それを壁にしてつぶして留める
表面が少しぷっくりするものの、これが一番スマートに仕上がると思い、ひらめいたときにはこれだ!と声が出ましたw
![さちこ](https://sachikochida.com/wp-content/uploads/2018/03/profile-20160803-chidasachiko-monokuro.jpg)
これだ!
早速、試作を作ってみると、なかなか良さそうです。周囲がぷっくりするので、石の存在感が増す感じでした。
お客さまにこれで行きましょう!とご連絡をすると、すぐにOKが出ました。
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こんなかんじになりますの図
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2つロウ付けしたところ
仕上がりはこんな感じになりました↓
![sora](https://sachikochida.com/wp-content/uploads/2020/03/DSC_1908-e1585128859908.jpg)
作業に夢中になると
写真撮るの忘れちゃうんだからもう。
お客さまにも気に入ってもらえたようで、満足のいく結果となりました☆
レーザー刻印
今回は表面にメッセージを刻印がご希望でした。これはレーザー刻印で業者に委託します。レーザー刻印は石留め前に入れてもらいました。
しかし頭に合わせてプレートを少しカーブさせたので、
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もしかしたら文字が
ゆがむかもしれません
とのことでした。
まっすぐなプレートに刻印してから、カーブさせることも考えましたが、作業工程などを考えて、カーブの面に刻印してもらう事にしました。
結果は問題なく、とてもきれいに刻印されていました。
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刻印もばっちり☆
![さちこ](https://sachikochida.com/wp-content/uploads/2018/03/profile-20160803-chidasachiko-monokuro.jpg)
良かった☆
ヘアラインを整えながら全体を磨いて、完成です。
強度と、ゴムを簡単に交換できるので、ゴムをとめる裏面にはこの形を採用しました。
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裏側
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裏側
オーダーメイドはやりがい満点
はじめて作るものは、試行錯誤の連続になりがち。
見積もりを伝えてしまっているので、その予算内で形にしないといけません。
見積もりが甘いと、今回の「カボション留められない件」のような予期せぬ事態に陥り、良い案がむつからなかった場合や失敗した場合は自分の懐にも、お客さまにとっても、いい結果にならない場合があります。
なのである程度こちらが信頼できる方、最終デザインのすり合わせにも協力してもらえて、その上で私の作風を気に入り、ある程度自由に作らせてくれる方でないと、オーダーメイドは受けられません。
とは言うものの・・・個人でやっているからこそかゆいところに手が届くのも事実。
お客さまも、探してもどこにもなく、でもやっぱり欲しい!という思いでオーダーメイドを相談してくださるので、形になったときにはとても喜んでもらえます。
メーカーでは断られてしまうような、かゆいところに届くオーダーメイド、できる限りこれからも作っていきたいと思います。
ではでは。
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